2013年7月6日土曜日

もし闘わば(ネコ科の猛獣編)



今日、ネコ科の猛獣に遭遇した。

ライオン、トラ、ヒョウ、アビシニアンなど、
最強説が囁かれる動物は例外なくネコ科だ。

そんなネコ科の猛獣が、我が物顔で
マンションの敷地内を侵犯し、エアコン室外機上を占拠している。

その野生特有の鋭い眼光は、
「隙あらば郵便受けやガスメーターも占拠してやる」
と言わんばかりだ。

もはや武力衝突は避けられない。

もしこのネコ科の猛獣と闘うなら、どんな戦法が有効か?

まず大事なのは距離。間合いだ。

ネコ科の動物は自らのヒゲの幅を本能で覚えている。

ヒゲの幅を基準に、通り抜けられる隙間と
通り抜けられない隙間を瞬時に見分ける。

攻撃範囲、守備範囲、交友範囲、デリケートゾーン、
ネコ科の動物にとっては、すべてはヒゲの幅が基準なのだ。

逆に言えば、この間合いさえ外せば、
いかに最強の猛獣と言えど何もできない。

ヒゲの幅の距離に詰められないよう利き腕を前方に伸ばし
指さし確認の要領で牽制しつつ、
遠目の間合いから一気に首根っこをつかむ。

首根っこさえつかんでしまえば、猛獣も飼いネコも変わらない。

後は気長に毛玉を吐き出すのを待つだけだ。

幸い今日は、テレビに出てきた倖田來未のモノマネをする人の
大声に驚いたネコ科の猛獣が逃げていったため、闘いは回避された。

ちなみに私は、これまでも数々の野生動物との闘いを
シミュレーションし、その度に完全勝利を収めている。

この機会にそちらも読み返していただければ幸いである。

もし闘わば(大きな動物編)
もし闘わば(大きな虫編)
もし闘わば(大型犬編)
もし闘わば(対複数編)

室外機の上にクリスタルガイザーを満たしたペットボトルを配置してから、
今日はこの辺で横になることにする。

2013年6月28日金曜日

強制的なLサイズ


2週間前の綿毛禍以来、空室となっていた隣室に
新たな住人が引っ越してきた。

私が期待していた、ひとり暮らしの女子大生ではなく、
田辺さんという単身赴任の中年男性だった。

しかし、わざわざ粗品持参であいさつに来てくれたところを見ると
悪い人ではなさそうだ。

粗品の中身は、田辺さんの名字がプリントされたTシャツ。
なるほど。これならすぐに名前を覚えられる。

……と思ったのだが、マンションの住人全員が
田辺Tを着て回覧板を回したりゴミ出しを行うようになったため、
あっという間に誰が本物の田辺さんだかわからなくなってしまった。

木を隠すなら森の中。
豆を配置するなら弁当箱、及び重箱の右角っこ。
(但し左利きの人においては、この限りではない)

この田辺という男、もしかしたら"とんだ一杯食わせ物"かもしれない。
あるいは、"今夜一粒ピスタチオ"と言い換えてもいいだろう。

この田辺という男が、どこまで引っ越しの
あいさつに行っているのか定かではないが、
すでに最寄り駅の商店街は田辺Tで溢れ返っている。

このあまりにも不自然な普及速度が、
新たなご近所トラブルの火種とならないことを祈るばかりだ。

とりあえず、綿毛的な警戒だけは
今後も怠らずに続けていきたい。

洗濯によってプリントの黒が溶けだし
黄色がくすんできたことに心を痛めつつ、
今日はこの辺で横になることにする。